何が変わったか
これまで慢性疼痛と発達特性 (ADHD, Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder, 注意欠如・多動症) の関連は、臨床医の経験的観察として疑われてはいたが、一般人口を対象とした大規模疫学解析は世界的に存在しなかった。
東京大学の研究グループは、過去4週間に痛みを経験した全国の成人 4,028 人を対象とする調査を実施し、ADHD 症状が慢性疼痛の長期化・強度と統計的に有意に関連することを世界で初めて一般住民レベルで示した。極めて強い痛みを訴える層のうち 38.3% が ADHD スクリーニング陽性で、一般集団の有病率を大きく上回った。
社会にどんな影響があるか
主たる影響として、慢性疼痛の難治例に対して ADHD スクリーニングと治療を組み込む臨床経路が新しい介入候補として浮上する。整形外科・ペインクリニック・心療内科の連携設計が見直され、難治性疼痛の治療成績の底上げに寄与する可能性がある。健康保険適用や産業保健の文脈でも論点になる。
一方で副作用として、ADHD と慢性疼痛の双方を抱える患者層は元々スティグマ (社会的偏見) の対象となりやすい。「痛みは精神症状由来」という単純化が広がると、本来の身体的痛覚に対する治療が疎かになる懸念がある。スクリーニング普及には誤解防止の啓発が必須である。
俺にどんな影響があるか
産学連携の文脈では、東大の臨床研究シーズが疫学手法と組み合わさることで「臨床経路の再設計」という具体的なソリューション提案にまで届く好例である。個別の遺伝子・分子レベルの研究と、社会実装に近い疫学・臨床研究の双方を持つ大学のポートフォリオは、PRES の「レンタル DX 推進室」の対象として極めて魅力的になる。
スクリーニング自動化、患者層別化アルゴリズム、ADHD と疼痛を併発する層の長期追跡コホート構築といった、IT で介入できる余白がそのまま事業ネタとして読める研究である。
ニュースの詳細
東京大学のグループは過去4週間に痛みを経験した全国の成人 4,028 人を対象に、ADHD 症状の有無、痛みの強度、痛みの持続期間を解析した。一般住民を対象に ADHD と慢性疼痛の関係を詳細解析した世界初の疫学研究と位置付けられている。
ADHD 症状を有する人では、痛みが長引きやすく強度も高くなる傾向が統計的に有意に認められ、極めて強い痛みを訴える人の 38.3% が ADHD スクリーニングで陽性となった。一般集団における ADHD 有病率を大きく上回る数値で、両者の併発が偶然では説明できないことを示す。
臨床的な意義として、ADHD のスクリーニングと治療が難治性慢性疼痛の新たな介入手段となる可能性があり、医療現場・産業保健・政策面での応用が期待されると研究グループは指摘している。先行する東京大学医学部附属病院の発表でも、両者の関連の解明が研究テーマとして言及されており、本論文は同系列の追加成果と位置付けられる。