Shoji Times

#2026-05-02
20 sources → 14 news printed at 2026/05/04
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ケント大、マッチングアプリで陰謀論プロフィールが恋愛・友人関係意欲を統計的に下げると因果実証

ケント大、マッチングアプリで陰謀論プロフィールが恋愛・友人関係意欲を統計的に下げると因果実証

オンラインデーティングのプロフィール文化が「個性アピール」と「信頼シグナル」のトレードオフ構造を持つことが定量化され、サービス側のプロフィール設計指針も影響を受ける可能性がある

ケント大、マッチングアプリで陰謀論プロフィールが恋愛・友人関係意欲を統計的に下げると因果実証


何が変わったか

これまで「プロフィールに何を書くと第一印象を損なうか」は経験則・自己啓発レベルの話で、個別属性 (政治信条・宗教・趣味) が恋愛意欲に与える因果的影響を統計的に切り出した研究は限定的だった。

2026年2月に英ケント大学心理学部が Personality and Social Psychology Bulletin に発表した4実験の結果が、陰謀論を信じている旨をプロフィールに記載するだけで、誠実さ・知性・親切さ・温かさといった人物評価が下がり、「友達になりたい」「恋人として会いたい」といった関係構築意欲が明確に低下する因果関係を提示した。陰謀論を「否定する」記述は評価低下を招かず、問題は「信じている」と表明する側にあると示された。本研究はナゾロジー (kusuguru) が5月2日に日本語で再公開し、本邦読者に到達した。

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、マッチングアプリのプロフィール文化が「個性アピール (uniqueness)」と「信頼シグナル (trustworthiness)」のトレードオフ構造で動いていることが定量化された。陰謀論プロフィールは「個性的・ユニーク」とは見なされる一方、信頼・温かさを失う、という非対称な代償構造である。アプリ提供側にとっては、プロフィール記入欄の設計 (自由記述で何を促すか / 何にネガを返すか) が利用者のマッチング成立率に直結するという、UX設計の根拠データになる。政治的に分極化したコミュニティ (右派ユーザー同士の “右派陰謀論を肯定する側” のみ正の反応など) のクラスタリング助長効果も見える。

一方で副作用として、本研究は架空プロフィールへの参加者評価という統制実験で、実マッチングアプリの行動データではない。実際にスワイプする・メッセージするといった行動レベルでの再現は別途必要で、「プロフィール評価が下がる」=「実マッチング率が下がる」とは直結しない。また、陰謀論信念は政治的アイデンティティと相関するため、観測されている効果がどこまで陰謀論そのものの影響で、どこから政治的不一致由来の効果かの切り分けにも追加検証の余地がある。

ニュースの詳細

研究はケント大学心理学部の Ricky Green、Lea C. Kamitz、Daniel Toribio-Flórez、Mikey Biddlestone、Frank Gasking、Robbie M. Sutton、Karen M. Douglas らによるもので、Personality and Social Psychology Bulletin に掲載 (doi:10.1177/01461672251399448)。Tinder に似せた架空プロフィールを参加者に評価させる4つの実験を実施。陰謀論を支持する一文があるプロフィールは、誠実さ・知性・親切さ・信頼性・温かさといった「関係構築の基本要素」がいずれも有意に低下し、「友達になりたい」「恋人として会いたい」の意欲指標も低下した。

参加者の政治信条によって反応の方向は異なり、リベラル参加者は右翼系陰謀論を支持するプロフィールに対しより強い拒否反応を示す一方、保守的な参加者の一部は右翼系陰謀論を否定するプロフィールよりも肯定するプロフィールに高い恋愛意欲を示すケースが観察された。陰謀論を「否定する」記述は評価低下を招かず、評価ペナルティは「信じている」と表明する側にのみ発生する。元論文の主任著者 Ricky Green は「陰謀論を信念として開示することは、ユニークさのアピールにはなるが、その代償として温かさや信頼が失われる」とコメントしている。

source: ナゾロジー , University of Kent (公式リリース) , Phys.org , Personality and Social Psychology Bulletin (論文)