何が変わったか
Git の Co-Authored-by: トレーラーは元来、ペアプロやレビューで実質的な貢献をした人間の協力者をクレジットする慣習として運用され、コミットグラフは「人間の共著者を機械的に拾える」前提で読まれてきた。
5月3日、Microsoft の Visual Studio Code 1.118 リリースで git.addAICoAuthor 設定がデフォルト “off” から “all” に切り替わり、Copilot どころか AI 機能をすべて無効化したユーザーのコミットにまで「Co-Authored-by: Copilot」トレーラーが付与されていることが発覚した。Microsoft 側のプリンシパルエンジニアが説明文なしでマージし、開発者 Dmitriy Vasyura が PR #310226 でフラグを反転させていた。GitHub と Hacker News (47989883) で大規模な反発を受け、Vasyura は誤りを認め、バージョン1.119でデフォルトを戻すと表明した。
社会にどんな影響があるか
主たる影響として、Git の標準フィールドがエディタ・ベンダーのテレメトリ枠として上書きされる事例として、OSS エコシステム全体に「AI 表記の正準化」を迫る圧力が生まれる。コミットグラフ・GitHub の貢献者アルゴリズム・下流監査ツールはいずれも Co-Authored-by を「人間の協力者シグナル」として消費しており、エディタ常駐シグナルとの混在は信頼性を毀損する。Linux カーネルや厳格な AI ポリシー下で動く企業 (政府系・金融系・防衛系) は、コミット由来の AI コードを排除する内部規定との整合を再点検せざるを得ない。
一方で副作用として、Copilot 利用者数の水増し疑惑や著作権上の不確実性 (AI 生成と表記された人間コードの法的扱い) が報道言説の中心に流れ込み、本来「Git トレーラーの正準化が必要」というシステム設計論が後景に退くリスクがある。Microsoft が1.119で戻しても、Co-Authored-by: の意味論はもう純粋ではない、という後遺症は残る。
俺にどんな影響があるか
PRES でも Claude Code 等の AI 補助ツールを業務に取り込む動きは進んでいるが、「ベンダー側がデフォルトでテレメトリを忍び込ませた」今回のケースは、AI ツール採用時のガバナンスチェックリストに「コミット履歴・成果物への自動メタデータ付与の有無」を明示的に加える根拠になる。レンタル DX 推進室サービスで企業の研究室との成果物管理を扱う場合、AI 由来表示の有無は契約条項にまで持ち上げる論点になりうる。
ニュースの詳細
問題の発端は VS Code リポジトリの PR #310226 で、git.addAICoAuthor 設定を “off” から “all” に変更する一行修正。マージは Microsoft プロダクトマネージャー主導で行われ、プリンシパルエンジニアが説明なしで承認し、即日マージされたと報告されている。1.118 リリース後、AI 機能を完全に無効化していた開発者からも「身に覚えのない Copilot 共著者付与」の報告が相次ぎ、GitHub Issue #313064 が立ち上がった。
トレーラーはコミット作成時の VS Code UI には表示されないため、開発者がローカルで気付かないままプッシュするケースが多く、コミットグラフ汚染の範囲は広い。Vasyura は「AI 機能無効時には作動すべきでなく、AI が関与していないコミットを AI 生成と表記すべきでなかった」と認め、1.119 でデフォルトを反転すると約束。ただし反発スレッドはすでに「スパム」としてロックされており、議論プロセスの透明性にも疑問が残る。