何が変わったか
これまで日本の新卒女子学生の世帯志向は「共働き多数派・専業主婦も2割前後」という構造で、企業の制度設計 (育休・短時間勤務・キャリアコース別配置) もその割合を前提に組まれてきた。「共働き8割超え」というラインは、調査開始の2016年以降一度も突破されていなかった。
株式会社キャリタスの2026年卒調査で、希望する世帯スタイルが「夫婦共働き」と回答した女子学生が81.3%に達し、調査開始以来初めて8割を超えた。 同時に「専業主婦世帯」希望は7.4%と、2016年卒の17.8%から10ポイント以上下落。男子学生の共働き希望も75.8%と4分の3を超え、新卒の世帯志向が「共働きデフォルト」へ完全に移行した形になる。
社会にどんな影響があるか
主たる影響として、新卒採用・配属・キャリアパス設計の前提が「共働き世帯モデル」一本に絞られる方向へ動く。育休取得希望率は女子87.2%・男子66.2%と男女ともに高く、「どちらかといえば取得したい」を含めると男女とも9割超になる。配偶者の育休取得希望率も男子82.5%・女子65.0%で、「夫婦が協力して子育てする前提」が学生側の標準形になっている。男性育休制度・短時間勤務制度・配偶者帯同転勤制度などを前提から実装に組み込む必要が、企業側に生じる。
一方で副作用として、共働き志向の急速な高まりが、現実の保育インフラ・育休復帰サポート・賃金水準と乖離した期待値を生むリスクがある。総合職以外の女子学生の20.5%が「出産を機に退社を考えている」と回答しており、理想と実態の溝はまだ大きい。「共働き希望8割」は社会の合意ではなく、就労前の理想値と読むのが正確。
ニュースの詳細
調査は株式会社キャリタスがキャリタス就活2026学生モニター (うち就職先決定者) を対象に、2026年2月17日〜3月3日に実施。回答人数は870人 (文系男子178人、文系女子398人、理系男子178人、理系女子116人)。
「入社企業でどのくらいの期間働くつもりか」については、男女とも「定年まで働きたい」が最多 (男子50.6%、女子45.3%)、続いて「5年くらい」「10年くらい」。定年まで勤めないと回答した人の退職理由予想は、男女とも「転職」が最多 (男子85.6%、女子70.5%)。女子で「結婚」を選んだ人は約6%と少数だが、「出産・育児」は13.5%、特に総合職以外では出産を機に退社を考える層が20.5%に上った。
将来の世帯スタイル希望は「共働き」が最多で男子75.8%・女子81.3%、「専業主婦世帯」を希望する人は男子13.2%・女子7.4%。女子の経年データでは、2016年卒で17.8%だった「専業主婦世帯」希望が10年で半減した。「家庭を持ちたくない」は男女ともに1割。子どもを持ちたいと答えた人は男子63.4%・女子53.3%で男子が高く、自身の育休取得希望は女子87.2%・男子66.2%、配偶者の育休取得を望む割合は男子82.5%・女子65.0%。
キーワード解説
ビッグファイブとは別の「人生設計の5指標」 とは、キャリタス調査が継続的に追っている (1) 勤務継続意向 (2) 退職理由予想 (3) 世帯スタイル希望 (4) 子供を持ちたいか (5) 育休取得希望、の5項目。新卒就職時点での人生設計の「期待値」を集約する独自指標として、企業の採用設計・育児支援制度設計に幅広く参照されている。
総合職 / 一般職 とは、日本の新卒採用で長く使われてきた職掌区分。総合職は転勤・幹部候補を含む総合的な職務、一般職は事務的補助職務に限定された職掌で、後者は女性比率が極端に高い構造を持つ。近年は「コース別人事」廃止の動きが進むが、本調査でも総合職以外の女子学生で出産退社志向が顕著に高い (20.5%) ことから、構造的格差は依然として残る。
男性育休 とは、子の出生・育児期に男性労働者が取得する育児休業。育児・介護休業法で全労働者に保証された権利だが、日本では取得率が長らく低水準にとどまり、2022年改正で「産後パパ育休」が新設され、企業側の取得促進が義務化された。本調査の「配偶者に育休取得を望む割合 (女子65.0%)」は、男性育休の社会的需要を直接示す数値として意義が大きい。