Shoji Times

#2026-05-09
20 sources → 14 news printed at 2026/05/10
science
四川大・UBC、酵素でドナー腎臓をO型に変換し血液型不適合移植を成功、超急性拒絶なし

四川大・UBC、酵素でドナー腎臓をO型に変換し血液型不適合移植を成功、超急性拒絶なし

酵素処理によるドナー臓器の血液型変換は、O型患者の不利な待機時間を解消し、移植医療における血液型適合制約を技術的に突破する経路を開く

四川大学とブリティッシュコロンビア大学、酵素処理でドナー腎臓をO型相当に変換、ヒト脳死モデルで超急性拒絶反応なし


何が変わったか

これまで腎移植では、血液型適合が原則であり、O型患者は普遍的に提供しても受け入れられる側で長く待たされる構造だった (通常2〜4年長い)。ABO 血液型不適合移植も生体ドナーに限定され、術前後に集中治療が必要だった。

四川大学とブリティッシュコロンビア大学 (UBC) の研究チームは、 2019年に UBC が発見した「A型抗原を切り取る2種の高効率酵素」をドナー腎臓に適用してO型相当に変換し、家族同意のもと脳死患者へ移植したところ、術後2日間にわたって超急性拒絶反応の兆候を示さず機能した。3日目に軽度反応はあったものの、血液型不適合時より遥かに軽度。Nature Biomedical Engineering に論文掲載。

ユニバーサル腎臓のキービジュアル
酵素で腎臓のA型抗原を切除しO型相当に変換するアプローチを示すイメージ。GIGAZINE 記事のヒーロー画像。

社会にどんな影響があるか

移植医療における血液型適合という根本制約が技術的に突破される可能性が初めて人間モデルで実証された。O型患者の不公平な待機時間が解消され、ドナー臓器プール全体の運用効率が劇的に向上する道筋が示された。死体ドナー臓器の活用範囲が広がるため、生体ドナー依存度の低下にも繋がる。

副作用として、3日目の軽度反応や長期効果は未検証であり、実用化までには免疫抑制薬との併用や酵素処理プロトコルの最適化が必要。倫理的には「臓器を改変してから移植する」という新しい同意枠組みの整備も求められる。

ニュースの詳細

血液型は赤血球上の抗原 (A型はA抗原、B型はB抗原、AB型は両方、O型はどちらもない) で決まり、血漿中の抗体が異物抗原を攻撃する。鍵となる酵素は2019年 UBC の Stephen Withers 博士チームが発見した「A型血液を特徴づける糖鎖を切り取りO型化する2種の高効率酵素」で、研究者らはこれを「ハサミ」と例える。

研究を共同主導した Withers 博士は「ヒトモデルで超急性拒絶なしに機能したのは初めて。長期治療成績向上に向けた貴重な知見を得た」とコメント。論文は Nature Biomedical Engineering 誌、UBC リリースは2025年10月、GIGAZINE は2026年5月9日報道。先行の万能血液製剤研究 (2024年5月) と地続きの臓器版応用となる。

キーワード解説

ABO 血液型 とは、赤血球膜上の糖鎖抗原 (A抗原・B抗原) の有無で4区分する分類体系。1900年に Karl Landsteiner が発見し、輸血医学の基礎となった。血漿中の抗体は異種抗原を攻撃するため、不適合輸血・移植では超急性拒絶反応が起きる。

超急性拒絶反応 (hyperacute rejection) とは、移植直後 (数分〜数時間) に既存抗体が移植臓器を攻撃して血栓を形成し、臓器が機能不全に陥る最も重篤な拒絶反応。血液型不適合・抗HLA抗体陽性などが原因で、従来の免疫抑制薬では制御困難とされてきた。

ABO 血液型不適合移植 とは、生体ドナー臓器を血液型不一致でも移植するため、術前後に血漿交換・抗体除去・免疫抑制を集中的に行う技術。日本では北海道大学などが先進例で、生体腎移植の20%程度が血液型不適合とされる。

Nature Biomedical Engineering とは、Nature 系列の生体工学・医工学分野の国際ジャーナル。2017年創刊で、医療デバイス・再生医療・診断技術の研究成果を扱う。インパクトファクターは20超で、当該分野の中核誌として機能する。

source: GIGAZINE , Nature Biomedical Engineering 原著論文 , UBC ニュースリリース