Shoji Times

#2026-05-10
20 sources → 16 news printed at 2026/05/11
science
オックスフォード大Kloewer氏ら、ビジネスクラス・ファーストクラス廃止で航空業界の二酸化炭素排出量を最大57%削減可能と試算

オックスフォード大Kloewer氏ら、ビジネスクラス・ファーストクラス廃止で航空業界の二酸化炭素排出量を最大57%削減可能と試算

「エンジン効率」中心の議論から「座席利用率と客室レイアウト」中心の議論へ、航空業界の脱炭素論点が経営判断レベルへ移行する

オックスフォード大Kloewer氏ら、ビジネスクラス・ファーストクラス廃止で航空業界の二酸化炭素排出量を最大57%削減可能と試算


何が変わったか

これまで航空業界の効率性議論は、「ジェット燃料あたりエンジン推力」という工学的指標が中心で、「二酸化炭素排出量あたり輸送人員」という運航効率はほとんど焦点になっていなかった。

オックスフォード大学の Milan Klöwer 氏らの新研究で、ビジネスクラス・ファーストクラスを廃止して全席エコノミークラスにすれば、航空業界の二酸化炭素排出量を 26〜57% 削減できる可能性が示された。同研究はさらに「平均搭乗率を 80% から 95% に引き上げる」で 16% 削減、「ボーイング 787 とエアバス A320neo のみの運航」で 27〜34% 削減という別シナリオも提示しており、客室レイアウトと機材選定が脱炭素の主要な経営判断レバーであることを定量的に示した。

航空機の二酸化炭素排出量推移
1980 年に乗客 1 人 1km あたり約 260g だった航空機の二酸化炭素排出量は、2019 年に約 90g まで減少したが、電化鉄道 (5g 未満) と比べると依然として桁違いに多い

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、航空業界の脱炭素議論が「電動化・水素・SAF (持続可能航空燃料) などの技術投資」中心から、「客室レイアウトと搭乗率の経営判断」中心へと論点軸を移す。エンジンや燃料の技術革新は 10〜30 年単位の長期投資だが、客室レイアウトの変更は実質的に短期で実行可能で、削減効果も大きい。プレミアムシートの利益率を考えれば航空会社にとっての経営インパクトは大きいが、「規制で広い座席に課税する」「マイレージプログラムでエコノミーを奨励する」など制度的選択肢が拡張される。

副作用として、ビジネスクラス・ファーストクラスは航空会社の主要収益源 (旅客売上の 8 割以上を担う場合もある) で、これを廃止すると運賃モデル全体の再設計が必要になる。エコノミー単一構成にした場合、長距離国際便のサービス品質と運賃水準は構造的に変化し、富裕層の利用頻度低下による「不必要な移動の抑制」という副次効果 (研究者が「悪いことではない」と示唆) も含む大きな社会変化を伴う。

俺にどんな影響があるか

PRES がレンタル DX 推進室サービスで扱う研究室の中に、SAF・電動推進・空力最適化など航空関連の脱炭素技術を持つ研究室があれば、本研究は「技術革新の代替案として運航効率改善が有力」という比較対照になる。技術投資 vs. オペレーション改善の意思決定フレームは、産学連携の提案で「研究室の技術が解決しようとしている問題に対し、より低コストな代替策はないか」を顧客に提示する際に応用可能。

ニュースの詳細

研究チームは 2023 年における各フライトルート・航空会社・航空機・空港ごとの運航効率を算出し、3 つの仮想シナリオをモデル化した。乗客 1 人 1km あたりの二酸化炭素排出量は路線・地域・機材で大きく異なり、800g 以上から 50g 未満までばらつく。最も効率の悪いフライトはアメリカ発着、次いで中国・ドイツ・日本と続く。ブラジル・インド・東南アジアは効率が良い傾向。

運航効率改善シナリオの比較
3 つのシナリオ (搭乗率引き上げ・新型機への置き換え・エコノミー単一化) による二酸化炭素削減効果の比較

格安航空会社はビジネス・ファーストクラスを持たない代わりに座席効率性を最大化しており、ボーイング 787 ドリームライナーやエアバス A320neo は乗客 1 人 1km あたり平均 65g 未満と効率が高い。長距離便は短距離便より効率が高く、これは離陸時のガス排出回数が相対的に少ない点と、大型機による 1 便あたり乗客数の多さが寄与している。

Klöwer 氏は「結論は、航空機の二酸化炭素排出量が『たまにエコノミーを使う客』と『頻繁にビジネス・ファーストを使う客』の旅行格差で大きく左右されていることを浮き彫りにする」「後者の不満はエコノミークラスの不便さに向かうかもしれないが、不必要な移動を減らす動機づけとして機能する」と述べている。航空業界は世界の二酸化炭素排出量の約 2〜3% を占め、飛行機雲の二次的温暖化効果を含めると寄与は約 4% に達する。

キーワード解説

SAF (持続可能航空燃料, Sustainable Aviation Fuel) とは、廃食用油・バイオマス・合成燃料 (e-fuel) などから製造される航空用ジェット燃料の代替。既存ジェット機にそのまま使える「ドロップイン」性が利点だが、生産コストが従来燃料の 2〜5 倍と高く、供給量も限られる。航空業界の脱炭素の主軸技術だが普及には時間がかかる。

飛行機雲 (contrail) とは、ジェット機の排気が高高度で凝結して作る雲。短時間で消える contrail と、長時間残存して上空に薄いシーラスを形成する persistent contrail があり、後者は熱を地上に閉じ込める温室効果を持つ。航空業界の温暖化寄与のうち、二酸化炭素排出と並ぶ主要因とされる。

ボーイング 787 ドリームライナー とは、ボーイングの中型双発長距離機。複合材料を多用した軽量設計と、ターボファンエンジンの効率改善により、従来機比 20% 以上の燃費改善を実現。2011 年運航開始以降、長距離国際路線の主力機材として急速に普及している。

エアバス A320neo とは、エアバスの主力単通路機 A320 の新エンジンオプション版 (New Engine Option)。CFM LEAP-1A または Pratt & Whitney PW1100G エンジンを搭載し、従来機比 15〜20% の燃費改善を実現。短中距離路線の主力機材として世界中の航空会社が大量発注している。

source: GIGAZINE , Communications Earth & Environment (Nature) , The Conversation