Shoji Times

#2026-05-10
20 sources → 16 news printed at 2026/05/11
science
ナゾロジー紹介、男女の友情格差は人類普遍ではなく白人男性に特有である可能性をNLSY97再分析で示唆

ナゾロジー紹介、男女の友情格差は人類普遍ではなく白人男性に特有である可能性をNLSY97再分析で示唆

1970年代以来の心理学の定説が「白人サンプル偏重 (WEIRD問題)」の産物だった可能性が示され、ジェンダー差研究全般の前提が揺らぐ

ナゾロジー紹介、男女の友情格差は人類普遍ではなく白人男性に特有である可能性をNLSY97再分析で示唆


何が変わったか

これまで心理学の通説は、男女の友情格差 (Gender Friendship Gap) を人類普遍の傾向として扱ってきた。1970 年代以降、「女性は感情を分かち合う Face-to-Face 型、男性は趣味を共有する Side-by-Side 型で情緒的結びつきが弱い」という整理が定説化していた。

フォックス博士による NLSY97 (全米青年縦断調査) の 1,765 名再分析で、この格差は黒人・ラテン系では小さく、白人男性層でのみ顕著に観測されることが示された。心理学が「男性全般」の傾向として一般化してきた現象は、実はアメリカの白人男性という特定の社会・文化的サブグループに偏った観測の結果だった可能性が浮かび上がっている。

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、心理学・社会科学における WEIRD 問題 (Western, Educated, Industrialized, Rich, Democratic な被験者偏重) が再び前景化し、ジェンダー差・年齢差・性格特性差などの一般理論を多文化的に検証し直す圧力が強まる。「男性は情緒的につながりが薄い」という言説は教育・人事・心理療法の現場で前提として使われてきたが、その前提自体が要再検証になる。

副作用として、ジェンダー差研究を全否定する方向に振れすぎると、白人男性層で実際に観察される傾向 (友情の希薄化や社会的孤立) が「特定層に集中する公衆衛生問題」としてフレーミングされにくくなるリスクがある。「人類普遍」と「サブグループ特有」のどちらに振るかの感覚バランスが問われる。

ニュースの詳細

調査は 18〜21 歳の男女 1,765 名を対象に、自分の「親友」一人を思い浮かべてもらい、関係を 0〜10 段階で評価する形式。「黒人」「ラテン系」「白人」の 3 グループに分け、家庭の社会経済的背景も統制した上で分析した結果、黒人グループでは男女の親密度差はほぼ無く、ラテン系でもわずか、白人グループでのみ男性の親密度が女性より明確に低かった。

フォックス博士は「過去研究の根拠データが WEIRD 問題で偏っていた可能性がある」と仮説を立て、人種・社会階層を変えれば結果も変わるはずだという予測を検証した形になる。具体的な統計値や効果量は紹介記事の本文では明示されておらず、原論文の参照が必要だが、心理学の代表的な定説に対する大規模データでの反証として注目される結果となっている。

キーワード解説

WEIRD 問題 とは、心理学・行動科学の被験者プールが Western (西洋)・Educated (高学歴)・Industrialized (産業化社会)・Rich (富裕)・Democratic (民主国家) な人々に偏っており、そこから得られた知見を「人類普遍」として一般化してきたという批判。Henrich らが 2010 年に提起し、再現性危機と並んで分野横断的な再検証を促した。

NLSY97 (National Longitudinal Survey of Youth 1997) とは、米国労働統計局が 1997 年から追跡している若年層の縦断調査。教育・職業・家族・健康などの広範な指標を長期にわたり収集しており、心理学・経済学・社会学の二次分析データソースとして大規模に活用されている。

Face-to-Face / Side-by-Side 友情 とは、社会心理学が女性と男性の典型的な友情スタイルを記述するために使ってきた区分。前者は対面で感情・悩みを共有する形、後者は活動や趣味を共有しながら横並びで形成される関係を指す。今回の研究は、この区分が文化・人種を超えて成立するわけではない可能性を示している。

source: ナゾロジー