Shoji Times

#2026-05-12
20 sources → 23 news printed at 2026/05/12
science

Beyond EPICA、南極 2.8km の氷床コアから過去 120 万年連続の気候データを取得

氷期サイクルが 4 万年周期から 10 万年周期に切り替わった「中期更新世遷移」の物理的トリガーを直接観測データから検証できるようになる

Beyond EPICA、南極 2.8km の氷床コアから過去 120 万年連続の気候データを取得


何が変わったか

これまで南極氷床コアによる連続気候復元の最長記録は EPICA Dome C プロジェクトで取得した約 80 万年分であり、それ以前の氷期 - 間氷期サイクルの直接データは存在しなかった。

欧州 10 か国の研究機関による Beyond EPICA コラボレーションが、南極で深度 2.8km の氷床コアを掘削し、過去 120 万年にわたる気候と大気組成の連続記録を取得したと先週ウィーンの欧州地球科学連合 (EGU) 総会で発表した。データはまだ査読を経ていないが、複数の気候サイクルで大気中二酸化炭素濃度の変動と全球気温の変動が連動していたことが確認できるという。

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、気候モデルの基礎データが約 50% 拡張されることで、過去 100 万年前後で氷期周期が突然 4 万年から 10 万年に切り替わった「中期更新世遷移」(Mid-Pleistocene Transition) の解明に直接データが供給される。この遷移は地球軌道の周期だけでは説明できず、大気 CO2 濃度の急激な低下が引き金との仮説があるが、これまで実証データが欠けていた。

副作用として、Beyond EPICA は氷床から取り出した気泡を全て分析しきるまでに数年を要するため、短期的にメディア向けの「答え」が出る性質ではなく、後続の専門研究との文脈接続が必要な長期データセットとなる。

ニュースの詳細

「(温室効果ガスは) 中期更新世遷移の前は後ほど大きな役割を持っていなかったと考えられているが、何が変化を起こしたかは確定していない」と Beyond EPICA プロジェクト調整役の Carlo Barbante (ヴェネツィア カ・フォスカリ大、氷河学者) は語る。Oregon State University の古気候学者 Edward Brook は「各サイクルの CO2 濃度がどう違うかを今や見ることができる。これは以前は分からなかった」とコメント。氷床コアは古代大気を閉じ込めた微小気泡を保存しているため、当時の大気組成の直接サンプルとして機能する。研究はまだ査読前で、本格的な分析データの公開はこれから数年にわたる。

キーワード解説

中期更新世遷移 (Mid-Pleistocene Transition) とは、約 100 万〜80 万年前に氷期 - 間氷期サイクルの周期が約 4 万年から約 10 万年へ突然切り替わった現象。地球の自転軸と公転軌道の周期 (Milankovitch サイクル) の天文学的計算では説明がつかず、地球システム内部のフィードバック (海洋循環・氷床ダイナミクス・CO2) が関与したとされるが因果関係は未確定。Beyond EPICA はこの「未解明の地球科学最大級の謎」の証拠を初めて連続データで検討可能にする。

source: Nature