Shoji Times

#2026-05-12
20 sources → 23 news printed at 2026/05/12
science

セーブル島の「コルク抜き状の傷」40 年の謎、グリーンランドザメ説とプロペラ説の両仮説が崩れる

1980 年代から続く長期未解決事件で「もっともらしい仮説」が直接証拠を欠いたまま定着していたことが、改めて科学報道の課題として浮上する

セーブル島の「コルク抜き状の傷」40 年の謎、グリーンランドザメ説とプロペラ説の両仮説が崩れる


何が変わったか

これまでカナダ東海岸沖のセーブル島 (世界最大のハイイロアザラシ繁殖地、年間 8 万頭の出生) で観察される赤ちゃんアザラシの「コルク抜き状の傷」(corkscrew injury) は、グリーンランドザメによる体ひねり噛みつき説 (2010 年論文) かボートのダクト付きプロペラ巻き込み説のどちらかが原因とされてきた。

しかし近年の研究で、両仮説とも致命的な弱点があることが明らかになった。グリーンランドザメ説は 40 年間誰一人として襲撃現場を目撃しておらず、近年同サメには獲物を吸引する「掃除機型」摂食が確認され「噛みついて体をひねる」攻撃そのものが疑わしい。プロペラ説も状況的な無理が指摘されている。コルク抜き状の傷の本当の犯人は再び謎に戻った。

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、「もっともらしい説」が直接証拠を欠いたまま 15 年以上定着していた事例が、長期未解決事件における仮説検証の手薄さとして可視化された。野生動物の集団死因解明には目撃証言・モーションセンサー・遺体解剖の連携が不可欠で、単一の生態学論文の推論で「答えが出た」とする判断の脆さが浮き彫りになる。

副作用として、本当の捕食者・原因の同定がやり直しとなり、保全管理 (グリーンランドザメへの懸念対応 vs プロペラ規制) の優先順位も再評価が必要となる。

ニュースの詳細

セーブル島は全長およそ 42km の細長い島でカナダ東海岸から沖へ約 290km。冬には毎年約 8 万頭のハイイロアザラシの赤ちゃんが生まれ、世界中のどの繁殖地よりも多い世界最大の繁殖地。傷は口元から胸へ螺旋状に走る深い裂傷で、骨が見えるほど深いが体の他の部分にはほとんど傷がない。「コルク抜き状」「コルクスクリュー」と研究者間で呼ばれてきた。1980 年代から研究者が犯人を追い続けてきたが、グリーンランドザメ説 (体長 6m に達する北大西洋深海ザメ、2010 年論文で有力仮説) は襲撃目撃ゼロが致命的、プロペラ説も状況に無理がある。

source: ナゾロジー