Shoji Times

#2026-05-12
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science

ウィーン工科大、二次元材料 - 絶縁層界面の 0.14nm「ファンデルワールスギャップ」が次世代チップ微細化の根本制約になると指摘

「2D 材料は厚さがないから無限に微細化できる」という前提が崩れ、ゲート絶縁層の物理限界が再設定される

ウィーン工科大、二次元材料 - 絶縁層界面の 0.14nm「ファンデルワールスギャップ」が次世代チップ微細化の根本制約になると指摘


何が変わったか

これまでグラフェンや二硫化モリブデンなどの「二次元材料」は、原子数個分の厚さしかなくトランジスタの極限的な微細化と高効率化を可能にする次世代材料として広く期待されてきた。

ウィーン工科大学の研究チームが Science 誌に発表した論文は、二次元材料を実際のデバイスに組み込むと材料と絶縁層の間にできる約 0.14nm のファンデルワールスギャップが、半導体デバイスのさらなる小型化に対する根本的な制約になり得ると示した。硫黄原子 1 個より小さい隙間が、ゲート制御の容量結合を弱め、絶縁層をどれだけ薄くしても余分な厚みが残るかのように電気的に振る舞う。

社会にどんな影響があるか

主たる影響として、「More Moore (微細化路線継続)」を支える二次元材料の魅力が、実装段階で予想外の物理限界に直面することが示された。次世代半導体デバイス設計のロードマップにおいて、二次元材料単独ではなく「界面エンジニアリングを伴う複合構造」が必須となり、研究開発の重心がシフトする。

副作用として、ファンデルワールスギャップはトンネル効果のバリアとしてゲートからの漏れ電流を減らす利点もあるため、設計目標 (低消費電力 vs 高速応答) によってはギャップを積極利用する設計も可能。問題の見え方は単純な「制約発見」より複雑になる。

ニュースの詳細

二次元材料は原子 1〜数個分ほどの厚さしかなく、トランジスタをさらに小さく・高効率にできる可能性があるとされてきた。トランジスタのゲート電極は半導体材料に直接電流を流さず、絶縁層を挟んで電界をかけ半導体中の電子状態を制御する。二次元材料と絶縁層を組み合わせると、両者は主にファンデルワールス力によって弱く接するため、界面に約 0.14nm のファンデルワールスギャップが生じる。これは電子が量子力学的トンネル効果で通り抜ける際の「トンネル障壁」として働きゲートからの漏れ電流を減らす利点がある一方、低誘電率の余分な層としてゲート電極と二次元材料の容量結合を弱める。絶縁層を薄くしてゲート制御を強めようとしても、界面にこの隙間が残る限り電気的には余分な厚みが加わったように見えてしまう。

キーワード解説

ファンデルワールス力 とは、分子間の弱い引力で、共有結合・イオン結合より桁違いに弱いが、分子間距離が近いほど効く。グラフェン層間の結合や、二次元材料を絶縁層上に積層する際の主要な接触メカニズムとして機能する。

トンネル効果 とは、量子力学的に粒子が古典的にはエネルギー的に超えられない障壁を確率的に通り抜ける現象。半導体デバイスでは、ゲート絶縁層を薄くしすぎるとトンネル電流が増えて漏れ電流が問題化する。

source: GIGAZINE , Science