Shoji Times

#2026-05-13
20 sources → 19 news printed at 2026/05/14
science
スーダンのアトバイ砂漠で260基の円形墓を新発見、紀元前4000年代の遊牧民共同体の存在を示唆

スーダンのアトバイ砂漠で260基の円形墓を新発見、紀元前4000年代の遊牧民共同体の存在を示唆

古代エジプトの王朝形成以前のサハラ遊牧民が、広域で共通の埋葬文化を持っていた可能性が衛星リモートセンシングで示された

スーダンのアトバイ砂漠で260基の円形墓を新発見、紀元前4000年代の遊牧民共同体の存在を示唆


何が変わったか

これまでアトバイ砂漠 (スーダン東部、ナイル川と紅海の間に広がる乾燥地帯) の円形墓はエジプト・スーダンの一部発掘事例で知られていたものの、孤立した遺構として位置付けられ、サハラ全域に広がる文化的連続性は推定の域を出なかった。

今回研究チームは Google Earth を含む衛星画像のリモートセンシング調査により、アトバイ砂漠の広範囲に 260 基の未知の円形・楕円形墓地を確認した。なかには直径 80m に達するものもあり、これらは単発の遺構でなく、共同体による組織的・記念碑的建造であった可能性が高い。

社会にどんな影響があるか

「サハラに散発的に存在した遺構」が「広域で共通する埋葬文化」へとパラダイム転換する。紀元前 4000〜3000 年頃という時代区分はエジプトでファラオの王国が形成される直前にあたり、サハラの遊牧民集団が王朝以前の社会組織を持っていたことを傍証する。考古学的には「ナイル川沿いの農耕文明 → 王朝形成」という従来の単線シナリオに、「砂漠遊牧民の共同体文化」が並存していたとする視点が加わる。

副作用として、衛星画像による発見は分布の俯瞰には強い一方、各遺構の年代や副葬品分析を伴うには地上発掘が必要で、260 基の検証には数十年単位の発掘調査が要求される。また、政情不安なスーダン情勢下では発掘自体が困難であり、文化遺産保護の観点でも危機的状況にある。

ニュースの詳細

研究チームは長年にわたる衛星画像のリモートセンシング調査により、地表に残る円形構造や石積みの痕跡を一つずつ確認した。発見の特徴は (1) 大きな円形または楕円形の囲い壁を持つ、(2) 内部に人間や動物が埋葬されている、(3) なかには直径 80m に達するものもある。発掘された少数の例の炭素年代測定と土器情報から、これらの墓を築いた人々はおおよそ紀元前 4000〜3000 年頃に生きていたと推定される。これはエジプトでファラオの王国が形成される少し前の時代にあたるが、彼らは都市定住型のエジプト人とは異なり、家畜の群れとともに移動する遊牧民だったと考えられている。

キーワード解説

リモートセンシング (remote sensing) とは、対象に直接触れずに離れた位置 (衛星・航空機等) からセンサで地表情報を取得する技術。考古学では遺跡探査・植生変化・水文学的分析等に用いられ、近年は LiDAR や高解像度光学衛星の普及で発見数が大幅に増加している。

Google Earth とは、Google が運営する地球規模の衛星画像・地図サービス。商用 / 研究目的の利用が広く、高解像度の衛星画像と過去履歴の参照機能により、地表の構造物・植生変化を経時的に分析可能。

アトバイ砂漠 (Atbai Desert) とは、スーダン東部のヌビア砂漠の一部を成す乾燥地帯。ナイル川と紅海の間に位置し、古代エジプトから紅海沿岸への通商ルート上にあったとされる。

source: ナゾロジー