何が変わったか
これまでスターシップは 2023 年の初打ち上げ以降、第 2 世代まで反復試験を続けてきたが、フィン構造・ホットステージ・推進システムは試験毎の改修で漸進的に手直しされてきた。
今回 SpaceX は 第 3 世代「スターシップ V3」を正式発表し、グリッドフィンを 4 枚から 3 枚に削減して各フィンを 50% 大型化、ホットステージを使い捨て型から 2 段目一体化に変更、推進システムを全面的に再設計してラプター 3 エンジン (海面推力 230tf → 250tf、真空推力 258tf → 275tf、質量 1630kg → 1525kg) を搭載した。初打ち上げ試験はテキサス州スターベース基地で 2026 年 5 月 19 日 (日本時間 5 月 20 日 7 時 30 分) に予定され、ダミー第 2 世代 Starlink 衛星 22 基を展開後、発射から 65 分後に着水する。
社会にどんな影響があるか
再利用型超大型ロケットの運用品質が、設計の局所改修フェーズから「世代単位の再設計」に移行する。スターシップ V3 のグリッドフィン削減、ホットステージ統合、燃料移送チューブの完全再設計、リアクションコントロールシステム改良は単なる部品改修でなく、ブースター回収の確実性と推進剤搭載量の両方をターゲットとする全体最適である。地球低軌道への大量輸送 (Starlink V2 級衛星、有人 Artemis ミッション、火星輸送計画) の前提コストが、機体世代ごとに段階的に書き換わっていく。
副作用として、5 月 19 日の打ち上げは旧バージョンを含めれば 12 回目の試験飛行となるが、第 7 回 (2025 年 1 月) の空中分解のような大規模事故のリスクは依然残る。ラプター 3 の同時始動が試される機会となり、初回試験で再設計部品の連動を全数的に検証することになる。
ニュースの詳細
スターシップは直径 9m・全長 121m の超大型ロケットで、1 段目「スーパーヘビー」と 2 段目「スターシップ」に分かれる。V3 のグリッドフィンはエンジン熱の影響を軽減するため位置が低くなり、シャフト・アクチュエータ・固定構造は保護性能向上のためブースターのメイン燃料タンク内部に移動した。燃料移送チューブは Falcon 9 第 1 段とほぼ同じ大きさまで拡大され、33 基すべてのエンジン同時始動と高速・高信頼の反転操作が可能になった。推進剤タンク容量も増加し、漏えいが起こりやすい機体後部の容積が削減された。
キーワード解説
ラプター 3 (Raptor 3) とは、SpaceX が開発するメタン-液体酸素 (Methalox) を使ったフルフロー二段燃焼サイクルロケットエンジン。SpaceX 社内史上最高の推力密度を持つ。
グリッドフィン (grid fin) とは、格子状の翼面を持つ操舵翼。打ち上げ時は機体側に折りたたまれ、再突入後は展開して機体の姿勢制御に使われる。Falcon 9 ブースター回収にも用いられている。
ホットステージ (hot staging) とは、第 1 段がまだ稼働中に第 2 段のエンジンを点火して切り離す方式。ペイロードを失わずに段間分離の力学的余裕を確保できる。
スーパーヘビー (Super Heavy) とは、スターシップシステムの 1 段目ブースター。ラプターエンジン 33 基を底部に並べ、地球帰還時はスターベース発射塔のメカジラ機構で空中キャッチされる設計。